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20歳代の働く人の悩み 対人関係の悩みを心理的視点から解決しよう。

1 はじめに

 働くうえで悩みは尽きません。今回のブログでは働く悩みを心理的(メンタルヘルス)観点から、就職してから間もない20歳代に焦点を当てて見てみたいと思います。

 メンタルヘルスの視点からは、予防を三段階に分けて考えています。すなわち①一次予防:病気やケガを未然に防ぐこと。②二次予防:すでにメンタルヘルスの不調が出ている段階で、早期に発見して治療を行い、さらに不調が重くなることを予防すること。③三次予防:メンタルヘルスの不調が重くなったときに、治療過程において保健指導やリハビリテーションを行うことにより社会復帰を促したり、再発を防止したりする取り組みをすること(厚労省 こころの耳 参照)。と定義されています。

 今回のブログでは、働く上での悩みを①一次予防、すなわちストレスをためないよう、こころの病気にかからないように予防していく観点からお話ししたいと思います。

2 20歳代の職場の悩み

 20歳代の職場の悩みとは、①職場の人間関係、②仕事にやる気が出ない、③スキルが身についている実感がない、④キャリアとプライベートの両立が難しいなどがあるそうです(キャリア・コンサルティング・ラボ 参照)。今回のブログでは①職場の人間関係を見ていきたいと思います。なお人間関係の問題はどの世代にも共通するものですので、すべての方々に参考になると思われます。

3 職場の人間関係 

 職場の人間関係の特徴は、それまでの学生時代の人間関係と違い、年齢も立場も様々な人たちと付き合わなけれなならないことが挙げられるでしょう。また職場では同じ職場の人たちと長時間一緒に過ごさなければいけません。どうしても人間関係の悩みが生じてしまいます。ハラスメントと名前が付くものであれば、信頼できる上司、守秘義務のある職場の心理士や保健師などに相談することが大事になります。ご自身の職場でどのような所で、どのような相談ができるのかを調べておかれるとよいでしょう。

 もっともハラスメントまではいかなくても、人間関係がギクシャクして嫌な気持ちになる。そしてストレスが溜まるということはよくあることだと思われます

1)どう人間関係のストレスに対処するか?

 私たちはストレスにさらされたとき、ストレスをやわらげようと何らかの対処法(ストレス・コーピング)を試みます。その方法には①問題解決型と②情動焦点型の2種類があります。

問題解決型のストレス対処法

 ①問題解決型とは、ストレスを生じさせている原因に対してなんらかのアクションを起こすことで、ストレスを生じさせないようにする対処法です。ストレスを生じさせている原因に直截働きかけることが特徴です。

 例えば同じ「島」で机を並べている同僚が何かにつけ嫌味なことを言ってきたり、八つ当たりのように強い口調で文句を言ってくるという状況を想定しましょう。対人関係・コミュニケーションは自分と相手との相互交流で生じています。もしかすると気が付かないあいだに相手に対して何か、相手が不愉快に勘違いする行き違いが生じている可能性があるかもしれません。それで相手は自分に良い感情を持つことができずに嫌味なことをつい言ってしまうこともあるでしょう。嫌味を言われれば自分も気分は良くないので相手に冷たい態度を取る。それに反応して相手の嫌味がまたきつくなる。このようにコミュニケーションの内容によってはネガティブに相互作用することがあるので、どんどん関係が悪くなることがあります。

 そこでこの相互作用に着目して、勇気はいりますが、自分からその相手に朝気持ちよく挨拶することから始めることは関係修復の一歩になる可能性があります。気持ちよい挨拶をされて気分が悪くなる人はいません。気持ちよい挨拶を続けるうちに、きっと良い気分にさせられた相手は徐々に良い反応を返してくれるかもしれません。このようにストレスを生んでいる相手に対して直截働きかける対処法を「問題焦点型」のストレス対処法と言います。

 一方で勇気を振り絞って気持ちよい挨拶をしてみても相手の反応が変わらないということもあるでしょう。そのような時「問題解決型」のストレス対処法として、上司に異動は難しいとしても机の配置を変えてもらうように相談することもできるでしょう。しかしこの対処法が難しい場合どういうストレス対処法ができるでしょうか?ストレスを生じさせる原因に直截働きかけることが難しい場合、ストレスにさらされたことで起きる辛い気持ちを和らげる対処法が有効です。これを「情動焦点型」のストレス対処法と呼んでいます。

情動焦点型のストレス対処法

 嫌味を言われて嫌な気分になったことを誰にも打ち明けることができないことは辛いことです。そこで気の置けない友人に酒の席に付き合ってもらい、愚痴を聴いてもらう。誰かに気持ちを聴いてもらうことで落ち込んだ気分は回復でき、すっきりした気分も味わえるでしょう。このように人に話を聴いてもらうことはカタルシス効果があると言われています。また気持ちを落ち着かせるためのリラクゼーション法として呼吸法などを行うことも情動焦点型のストレス対処法としては効果があるでしょう。

 このようなストレス対処を行ううえで大切なのは、その状況に応じて①問題解決型で対処できるのか?②情動焦点型で対処するのか?状況に応じて柔軟に選ぶことだと言われています。ストレスを生じさせている原因に対して直截なんらかの対処ができるのに、②情動焦点型を選ぶことは、ストレス対処として効果的でないと言われています。一方で上記の例でいくら挨拶をしても相手の態度が変わらないなど、直截相手に働きかけることができない、あるいは働きかけても効果が期待できない状況もあります。このようなときに①問題解決型にこだわることもストレス対処としては効果的でありません。

 直截ストレスを生じさせている原因に対して対処できるときは①問題解決型で、そうでないときは②情動焦点型のストレス対処法を用いることが効果的だと考えます。

2)小さなストレスには簡単なストレス対処法で。そのためにストレスのサインを受け取る感性が求められる。

 私たちはだいたい問題が起きてからどうしようか?と悩み始めます。ところが問題がおきていると自覚できる状態はすでにストレスが大きくなっている。すなわちもう無視することができないほどストレスが大きくなっているから、気づかずにはいられないとも言い換えることができるでしょう。そこまで大きくなったストレスに対処するには、大きなストレスに対応する本格的なストレス対処法が必要になってきます。

 そこまでストレスが大きくなる前の、ストレスが小さなときに対処できれば、比較的簡単で取り組みやすい対処法で済ますことができます。ちょっとイライラしているなと気が付くことができれば、カラオケに行く、あるいは散歩をするというストレス対処法が有効になります。そこでどうすればこの小さなストレスに気づくことができるでしょうか?

 まずはストレスに関係なく、リラクゼーション等の対処法を毎日続けるという対策もとても役立つと考えます。基礎体力をつける、あるいは予防するというイメージです。呼吸法や筋弛緩法を習慣化することが有効だと思います。

 次に生じているストレスのサインを感じ取って、ストレスが酷くならないうちに対処法を取ることも役立ちます。ただそのサインは人それぞれです。そこで自分自身のどういうときにストレスを感じているのかというサインを知ることが必要になります。例えば身体のコリが酷くなるということがあるのかもしれません。ストレスを感じて身体が緊張した結果としてコリが酷くなることもあるでしょう。「首が回らなくなる」という言い回しがあります。私たちはストレスを感じて緊張してお腹が痛くなるように、こころの状態が身体に反映することを経験しています。このようなこころの状態が身体に現れることをフロイトは「転換症状」と呼びました。そこで自分の身体の状況を注意深く観察して、何がストレスのサインになっているのかを見つけましょう。そしてそのサインに気づいたら、例えばのどが痛くなったら風邪のひき始めだから暖かくして寝ていようとするように、自分に合ったストレス対処法を試みるといいでしょう。

 この対処法は色々な種類を多く持っていた方がよりストレスの対処には役立つを思います。例えば嫌なことがあって、「あっ、自分って今イライラしているな」と、ストレスのサインに気づいたとします。すぐに気の置けない親友に話してすっきりしたいと思うかもしれません。しかし、急に友人と会って話を聴いてもらうというのも難しい時もあるでしょう。その時他に対処法がないと困ってしまいます。このような時に、ひとりで簡単にできる対処法をいくつか持っていると良いでしょう。たとえば、映画を観に行く、行きつけの店に行く、運動をするなどの対処法を日ごろから準備することがいざというときに役立ちます。

3)苦手は人って、だいたいパターンがきまっているよね? 好き嫌いを決める要因

 私たちは産まれたからすぐ、赤ちゃんの時から母親とコミュニケーションを取っています(ビービー,B ラックマン,F)。このように私たちは産まれてすぐにから今に至るまで、様々な人たちと関係を結んで人生を歩んできています。そしてこれまでかかわってきた人たちはカテゴリー化されて私たちのこころの中にイメージとして残っています。このイメージは喩えるなら人間関係を決める「雛型」(内的対象)のようなものです。

 例えば恋愛の対象になる人は毎回どこか似ている共通点はありませんか?自分を気に入ってくれる人、仲良くなる人もどこか共通点はありませんか?一方で反りが合わない人、快く思われない人もどこか似通ったものがないでしょうか?なぜなら私たちは自分のこころの中に持っている「雛型」を、現実に目の前の人に映し出(投影)して、目の前の人はこういう人だと判断していると言われているからです。

 例えば産まれてすぐの赤ちゃんがおなかをすかせて泣いたときに、すぐにお母さんがおなかがすいたことを感じ取っておっぱいを差し出します。赤ちゃんはとても安心するでしょう。このような経験によって赤ちゃんの心の中には、お母さんは安心して頼りになる人だという「雛型」が作られるです。そうすると母親に似たイメージを持つ女性上司や同僚に出会うと、この「雛型」を目の前の女性上司や同僚に映し出して(投影)良い感情を抱くことが多いでしょう。 一方で父親はとても子どもに厳しい躾けを求めていたとしましょう。そうすると、年上の礼儀作法に厳しい男性上司には、一緒に過ごすことが窮屈でストレスに感じることがあるでしょう。そうすると母親を投影した女性上司や同僚から注意を受けると、叱咤激励に捉えることができる一方で、父親を投影した男性上司から同じように注意を受けても、それは強い叱責として受け止める可能性があります。

 このように私たちが職場の人間関係でストレスを感じる要因として、私たちは自分のこころに持っている「雛型」を目の前の職場の人に投影している。そのようなことも大きく要因としてかかわっています。

4)サードプレイス

 サードプレイスとはアメリカの社会学者レイ・オルデンバーグが提唱した考え方です。職場(ファーストプレイス)でもなく、家(セカンドプレイス)でもないところという意味でサードプレイスと名付けました。

 サードプレイスでは、職場や家庭での役割から解放されることによる心理的な安心が得られると言われています。また気の置けない仲間と過ごすことでこころをリフレッシュさせ、ストレスを減らすこともできます。さらに孤独になることを防ぎ、仲間とつながっているという安心感はこころに安定と健康をもたらします。

 サードプレイスにはこのような効果が期待できるため、職場の人間関係でのストレスに対して対処法になると思われます。

 例えば愚痴をこぼせる行きつけの飲み屋はサードプレイスとなるでしょう。店の人や顔なじみの客と楽しく話すことはストレス対処法として効果的でしょう。

 また体力がある20歳代ならば自分にあったスポーツを選び、サークルに入ることもサードプレイスを作ることになります。体力があるために選ぶことができるスポーツも幅広く検討できるでしょう。仲間を作って体を動かし、楽しく過ごすことはとてもストレス対処になるでしょう。

 さらに勉強会に参加することもサードプレイスになると思われます。自分の技量をあげるために複数の勉強会や研究会に参加する心理士は多くいます。私も参加しています。勉強会や研究会は日時が決められており、決まった日に同じ仲間で集まるという「構造」を持つことはカウンセリングを受けることに似ています。この同じ日時に固定されるということがカウンセリングを受けるのと同じ安心感を与えてくれるからです。また先に挙げた悩みの一つである「③スキルが身についている実感がない」という悩みの解決方法にもなるでしょう。

4 職場の人間関係で生じるストレスをカウンセリングで解決する。

 先にお伝えしたように、ストレスが小さいうちは気軽なストレス対処法で解決するでしょう。しかしストレスが酷く感じられるほどになってきた場合、カウンセリングを利用されることでストレス対処法を身に着けることも有効と思われます。当相談室で行っている認知行動療法によって、ご自身の考え方の癖を明らかにし、この考え方の癖をストレスとならないように変えていくことができます。

 また、ご自身の対人関係のパターン、すなわちご自身がどのような「雛型」を持っていて、それをどのように現実の人に映し出して、その結果どのような行動や気持ちが生じているのかを理解するには、精神分析的心理療法が適しています。

 さらに決まった日時に落ち着いた場所で自分のこころを振り返る機会を持つことは、サードプレイスの観点からもお勧めすることができます。すなわちカウンセリングがサードプレイスとして、日々の生活に安心感を与えることでこころに余裕が出ます。それが職場での仕事や人間関係にポジティブな効果を及ぼすと考えます。

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