不安とその対処法と、自己効力感について
1、不安
不安とは、原因が特になくても心配したり緊張したりする心の状態を言います。誰でも日常的に経験することです。しかし不安で心がいっぱいになり日常生活がままならないほど深刻になると、それは不安障害かもしれません。このようなときは医療機関での治療が必要となるかもしれません。
当ブログでは、日常的に感じる不安の対処法をお話しします。
2、不安の性質
例えば苦手な人と一緒に仕事をしなければいけない、人前で発表しなければいけないなど、心配や緊張が予想されることがあると、いろいろな嫌なことが不安となって次々と頭に湧き上がってきます。不安のやっかいなところはこのようにまだ起こっていないことに悩み続けるので、実際に起こっているトラブルのように具体的に対処することができないことです。それゆえ対処できないまま際限なく湧き上がって頭を嫌ことでいっぱいさせる不安を追い払おうとすることで、心のエネルギーは使いつくされ、心をとても疲れさせてしまいます。
ところで皆さんは明日外出するときには天気予報をみると思います。明日の天気が外れることはあまりないので、気温や雨などの予報に従って持っていくものを準備できるでしょう。しかし3か月後の外出の準備をするとしたらどうでしょう?3か月予報がありますが、明日の天気予報と違って信頼性が大きく落ちる性質のものです。季節の変わり目ならなおさらです。夏服も冬服も、傘も長靴も、不快な思いをしたくないと持っていくものはとてもバックに入りきらない量になるでしょう。
不安と3か月予報の共通点は、まだ起こっていないこと、つまり対処できないことで思い悩み心のエネルギーを使い果たしてしまうということです。心の健康にとってこの心のエネルギーを使い果たすことが大きなダメージになります。
3、不安への対処法
起きてもいないことに思い悩む不安の性質上、思い浮かんだ不安に対処する方法はなく、ただ心のエネルギーを使い果たしてしまうことになります。でも考えてはいけないと次々思い浮かぶ考えを振り払おうとしても、前回ご紹介したように考えまいとするほど人は考えにとらわれてしまう性質を持っています。このような時は考えまいとするのではなく、不安とは別のことに意識を向けかえることで、不安な考えから意識を引きはがすことが効果的です。その方法が前回ご紹介した「呼吸法」やそのバリエーションのリラクゼーション法になります。ぜひ実践してみてください。
4、自分の行動や考えのパターンから不安に対処する
不安にとらわれたときのことを冷静に振り返ってみると一定のパターンがあることに気づくでしょう。例えば自分は「何々ができていない」と指摘される時とても不安になり怒りも湧いてくるいったように。。
このパターンは人それぞれ独自のものですが、自分のパターンに気づき理解することができれば、現実に「できていない」と指摘されているのか?それとも気にしすぎているだけなのか?を区別できるようになります。不安に対処するには、現実の出来事なのか?それとも心の中で想像しているのか?を区別することがとても大切になります。区別できるようになると、誰かから何かを指摘されたとしても感情的になることがなくなります。なぜなら現実に実力不足ならどうすれば問題が解決できるかと具体的に対処することができるようになります。一方で気にしすぎていることに気づけば、呼吸法などを使って意識を不安から引きはがすことができるように、ここでも具体的な対処ができるようになるからです。
このようにして自分は不安に対処できているという実感を得ることができると、不安に感じる出来事が起きると予測されるときも、「大丈夫、自分はうまく乗り越えることができる」という自信がつくようになります。この自信には「自己効力感」という名前がついています。自分の不安に対するパターンを理解し、自己効力感が身に付けば、不安に振り回されて心のエネルギーを使い果たしてしまうこともなくなります。そして不安からチャレンジできなかった新たなものにも取り組む意欲や自信が湧いてくるという点で、人生の可能性も広げることもできます。
このような自分のパターンに気づくという作業は、当相談室で行っている精神分析的心理療法が適していると考えています。ご関心がある方は当相談室のカウンセリングを受けてみられるのもよいと思われます。