ご挨拶、そしてストレスとその対処法 話を聴いてもらうことの大切さについて

 この度、新秋津駅から徒歩2分、秋津駅からも徒歩7分の所に、秋津こころの相談室を開室しました。この「投稿」ではこころの健康に役立つ話題を書いていきたいと思います。第1回はストレスについて説明します。
1、ストレスとは

 まずストレスという言葉は日常的に使われるものですが、最初に定義したのは生理学者のハンス・セリエです。セリエは、もともと物理学用語だったストレスの定義「物質に力が加えられた時に生じる歪みや反発力」を基に、「外部環境からの刺激によって起こる歪みに対する非特異的反応」をストレス、「ストレスを引き起こす外部環境からの刺激」をストレッサーと名づけました。ストレッサーとはストレスを生じさせる原因となるもので、ストレスはその反応になります。そしてこの「非特異的」というのは、失恋しても、怒られても、原因は様々でも、ストレスとしての身体は同じように反応、自律神経のバランスが崩れ、血圧や体温が低下するということです。

2、ストレスには2種類ある。
 ストレスは正確には、原因のストレッサーと反応のストレス反応に分かれますが、当ブログではわかりやすく「ストレス」と言っていきます。
 私たちが生活をしていてストレスを感じないことはないでしょう。ストレスは①一生で何回も経験しないような大きな出来事(ライフイベント)でしょうじるもの、②日ごろの生活で感じるちょっとしたイライラなどでしょうじるもの、大きく2つに分けられます。
 まず①一生で何回も経験しないような大きな出来事を見ていきましょう。アメリカの心理学者ホームズと内科医のレイは、ストレスの度合いを測る測定法として「ライフイベント法」を作り、出来事ごとのストレス度合いを調べました。ただこの調査は外国の古いデータですので、以下夏目誠、村田弘による日本での調査結果の抜粋を紹介します。
配偶者の死100 離婚73 別居65 留置所の拘留63 親密な家族の死亡 自分の病気あるいは障害53 結婚50 失業47 夫婦の和解45 退職45 家族の一員が健康を害する44 妊娠40 性の問題39 家族に新しいメンバーが加わる39 新しい仕事への再適応39 経済状態の変化38 友人の死亡37 異なった仕事への配置換え35 となっています。
 次に②日ごろの生活で感じるちょっとしたイライラなどで感じるストレスを紹介します。このストレスにはちょっとしたイライラもそうですが、ちょっとした日常感じる気分の高まり(デイリー・ハッスル)もストレスになると言われています。小学生の時、明日遠足という夜に気分が高まってなかなか寝付けないという体験をされた方も多いでしょう。つまりうれしくても嫌な思いをしても、それで気分が上下することがストレスになるのでしょう。

3、ストレス対処法
 ストレスは大きいものから小さいものまで、私たちは生きている限りストレスから逃れることはできないようです。そこでうまくストレスに対処することが必要になります。以下ラザルスの理論に基づいて説明します。
 私たちは大きな出来事から小さなイライラやハッスルを経験します。その時まずその出来事が自分にとってストレスになるか?ならないか?の判定(一次評価)を行うと言われています。そのうえでストレスになると判断すると私たちは自分が辛くならないように対処方法を探します(二次評価)。この対処法はストレスコーピングと呼ばれ、ストレスを生じさせている問題を解消しようと試みる「問題焦点型」と、ストレスを経験して生じる嫌な気持ちや気分の落ち込みを解消しようと試みる「情動焦点型」に分けられます。そしてこの二つは上手く柔軟に使い分けることが大切だと言われています。例えば試験に落ちてしまったとき、その結果自体を変えることはできないので「問題焦点型」は使えません。頑張ったけど結果が報われなかった悔しさをなぐさめてくれる人を求める「情動焦点型」が有効です。もっともなぐさめられて気分が落ち着いた後、なぜ落ちたのかという敗因分析をして来年の試験に臨むという「問題焦点型」を使うことは有効でしょう。

4、色々なストレスコーピング、引き出しが多い方がストレス対処には有効
 ①②どちらもこころの健康を回復するには、受けたストレスに対してその辛さを軽くするような対処法が必要になります。しかし②については日ごろ常に感じているストレスなので、「まあ、いいか」あるいは「ちょっと私が我慢すれば波風が立たないので」と、ストレスを軽くする対処を怠りがちです。そうするとちりも積もれば式にストレスが大きくなってしまうでしょう。小さな問題には小さな対処で解決できます。それゆえ日常の小さなストレスのうちに、ちょっとした発散法、例えば気軽に楽しめる趣味などが有効になるでしょう。あるいは寝る前の呼吸法もリラックスに役立ちます。
 ところでスポーツを観戦すると、監督の戦術の引き出しが多いほど勝つ確率が高いような気がします。ストレスに対する対処法も引き出しが多い方がストレスを和らげるためには有効と思われます。例えば旅行はとても良い気分転換になると思われますが、思い立ってすぐにいけるものではありません。こういう時は呼吸法などのちょっとした休憩時間でできる対処法を持っているとストレス対処法として役立ちます。色々な引き出しを多く持って、その状況で柔軟に色々な対処法を試すことを心掛けてください。

5、カウンセリングでのストレス対処 話を聴いてもらうことの大切さ

 ただ「岡目八目」と言われているように、他人の状況は冷静に見ることができる分よくわかる一方で、自分の問題はなかなか気づくことができないものです。カウンセリングにおいて、どのような対処法が使えるのかを話し合うことは、ストレスで受けた辛さを和らげるためにはとても有効だと考えます。
 また①のような大きな出来事では特に心身に受けるダメージは大きい場合があると思われます。ところでトラウマは何らかの強烈な事件の影響で心身にダメージを負うことで生じると言われています。つまり心的外傷と言われるように、一方的にダメージを加えられるというイメージです。しかし一方で事件を体験しても、その時の驚き、不安、恐怖などの強烈に湧き上がる気持ちを誰かに聴いてもらえたという実感を得て安心することができればトラウマにならないという考え(松木邦裕 2021参照)もあります。つまり事件が起きただけではなく、その時に経験した気持ちを汲み取ってくれる人がいることがトラウマにならないためにはとても重要なのです。
 ストレスを感じてこころが辛い時なぜカウンセリングが必要なのか?それは冷静に対処法を見つけ実践していくという点はもちろん大切です。加えてセラピストに気持ちを話し、聴いてもらえて安心できたと実感できることが、ストレスから生じる辛い気持ちが和らいで行くため自分でできるリラクゼーション法 呼吸法、筋弛緩法の紹介には必要だからです。

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